そろそろ配属の時期ですが、生産管理部で何を学べるのか=学んでほしいのか、について、コメントしたいと思います。生産管理部は、サッカーで言うところのボランチだと思っています(ピンとこない方、スミマセンm(__)m)。社内外の多くの部署、多くの人と関わって、製造行為の滞りの無い進行を、表から裏から、サポートします。モノづくりの段取り役、とでも言っておきましょうか。この点を何となくでも理解している人は多いと思います。その前提で、もう少し突っ込んだ話を少々。
いきなりですが、成果=〇〇×〇〇、と因数分解するとして、答えは何でしょう?
いろいろな答えがありますが、ここでは、作戦(=戦略や計画)×実行、とします。成果を最大化しようとすると、良い作戦(What)を、上手く実行する(How)、と言うことになります。インターネットがこれだけ一般的になる前は、情報の非対称性がビジネスで大きなテーマであり、価値になる社会でした。要は、知っていることそれ自体に価値がある、ということです。この社会では、知っていることをベースに作戦を考えることで、知らない人に大きな差をつけることができました。よって、知っていることを上手く活用して、優れた作戦を立案することが、競争に勝つためにとても重要でした。要は、成果=作戦×実行という式において、作戦が重視されていました。一方で、現在は情報の非対称性がかなり少なくなってきています。相対的に、知っていることの価値が低下しています。言い換えると、まともな頭の持ち主が、論理的に作戦を考えると、かなり似た作戦がアウトプットされます。作戦での差別化が難しくなっているということです(もちろん、鮮やかな作戦勝ち、というケースもありますが、以前と比較して減っています)。結果として、如何にして上手く実行するか(How)、異なる言い方をすると、高い生産性と継続の担保、そのための仕組みづくり、その前提となるヒト(という生き物)やITシステムに対する理解・洞察、といった辺りが重要になっています。(念のためですが、今でも、作戦立案は重要です。アホな作戦を実行することほど空しいことはないので(=正しい作戦が、当然の大前提)。ここで私が言っているのは、多くの会社が80点以上の作戦を立案するので、差をつけるには、優れた作戦だけ、では難しいということです。)
ここで、成果=作戦×実行という式に、PDCAサイクルの概念を意識すると、①作戦立案→②実行→③作戦の修正→④また実行→・・・、となります。そして、時間軸に注目すると、ここでも社会の変化を見ることができます。以前は、①にそもそも半年を投入して本社で作戦を作り込み、それを現場へ落とし込み、現場は本社の指示通りに②を3年実行し、といった時間軸もざらに存在しました。それくらい、ゆっくり、でした。が、現在は事業環境があっという間に大きく変化することも稀ではないです。そうなると、そもそも不確実性が高まり、①で考えた作戦が、すぐに意味がなくなってしまうため、①の作戦をしっかり作り込むより、会社の理念や大まかな方針を全社員が理解し、現場で仮説を多く含んだユルい作戦を立案し、それを、とにかくさっさと②実行し、すぐに現場で③修正して、という風に、高速で廻すことが勝つための必要条件となります。要は、本社で頭のいい人がじっくり作戦を考え、それを現場に盲目的にやらせるより、現場で試行錯誤しながらPDCAを高速で廻す方が、競争を優位に進めることができるようになっています。すなわち、こちらの目線でも、如何にして上手く実行するか(How)、が重要になっています。
ここまで書いたように、作戦(What:何をするか)から実行(How:どういう風にするか)へ競争のポイントがシフトしており、“考える現場による実行の徹底”が極めて重要になっています。そして、“考える現場”の一員としてHowの能力を磨くという意味において、以下のポイントで、生産管理部では丁度良い業務の質と量を経験できると思います。
- 1つの部署で性格もフローも異なる業務(計画、外注、調達、物流)にチャレンジできる。
- 適度に標準フローが存在し、適度に存在しない(笑)。(まだまだこれから、業務フローが進化する余地がある。特にIT面)
- 適度に(理不尽な)トラブルが発生し(笑)、予定調和的に業務が進まない。(バリューチェーン全体を俯瞰して、カイゼンする目線が養われる(部門最適ではなく全体最適))
- 適度に社内外の人と接する機会が多く、視野が狭くなりにくく、かつ、コミュニケーションスキルが上がる。(社内のほぼ全部署とやり取りし、加えて、サプライヤー・外注先ともコミュニケーションを行う)
従って、もし生産管理部で働くことになった場合、モノづくりの段取り役としての役割を果たすことはもちろんのこと、日々の業務の中でHowの能力を磨いてほしいと思います。このHowの能力は、具体と抽象を行き来する形で学ぶことで、生産管理部に限定されることのないポータブルスキルに昇華することができます。生産管理部で働きたくなった方、エントリーお待ちしてます!
※番外編・・・生産管理部で気を付けること。
甘やかされの罠:発注側に廻るので、いつの間にか“上から目線”になってしまいがち。また、少々イマイチなやり取りやアウトプットを出しても、相手は受注側なので、前向きに解釈してくれたり、易しく接してくれる。この辺りが営業との大きな違い。結果として、甘やかされた環境に慣れてしまい、”ちょっと勘違いした人”になってしまう。(あなたがエラい訳ではないし、仕事ができる訳でもない)
最適化の罠:目の前の仕事に限定されるスキルを学ぶことに一生懸命になり過ぎたり、目の前の仕事を上手くこなすことで得られる周囲からの信用・信頼の獲得に執着し過ぎたり、いずれにせよ目の前の仕事にジャストフィットすること(最適化)が目的と化すことで、具体と抽象を行き来する形で学ぶ(内省する)ことを忘れ(=具体だけを学んでしまう)、”目の前の業務を上手く廻せるだけの人”になってしまう。(これは、全部署共通だけどね)
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